№0115 新たなウイング
理想の女性を探す・・・それを目的としてナンパをしているナンパ師は決して珍しくない。
ユスもそういったナンパ師の1人だった。
ユスとは同年齢ということもあり、本名で呼び合うほどの仲となり、昨年後半から今年前半にかけてよく合流し、コンビナンパなどをしていた。
そんな彼も友人の紹介で彼女ができて、ナンパの世界から引退することを決意した。
その相手は可愛らいしいが、ユスが理想としていたスト高ではないらしい。
しかし、ユスとしてはいい年なのでいい加減落ち着きたかったようだ。
俺はユスから引退の決意を知らされたとき、彼の前途を祝福しつつも、取り残されたような感覚に襲われた。
ナンパ師の寿命は短い。
続けていくには相当のパワーが必要となるからだ。
また1人のナンパ師がこの世界から姿を消すこととなった。
別れもあれば出会いもある。
そんなとき、ちょうど以前渋谷でユスとコンビナンパした地方のOLのカズエから連絡が入った。
なんでも都内で行う友人らとハロウィンの日にパーティをやるから来ないかとのことだった。
引退したユスに代わるウイングを探す必要が出てきた。
何人かのナンパ師に声をかけてみた。
快諾してくれたのが花京院だった。
花京院はまだナンパの世界に入ってきたばかりで、少し前に一度コンビナンパをしたことがあったが、そのときはさすがに緊張しすぎて戦力にはならなかった。
しかし、花京院はなかなかの男前で、柔軟で前向きな姿勢があったので、俺は必ず大成すると睨んでいた。
この推測は的中し、花京院は少しずつではあるが着実に成長を遂げていくこととなる。
また、俺と花京院はこのパーティを皮切りにその後何度もコンビを組むことになるのである。
さて、そのパーティにいってみると、DJセットがあり、BGMをガンガンに鳴らしたクラブテイストのバーだった。
可愛い子は結構いたのだが仲間同士で固まってしまい、ナンパする雰囲気ではなかった。
おとなしくカズエと和もうとするが、音楽がうるさすぎて普通にしゃべることができない。
さらには、カズエはどうやら花京院に一目惚れしてしまったようだ。
花京院に思いっきりラブ光線を送っていた。
俺はカズエの友達にシフトチェンジしようとするが、やはり音楽に邪魔されてうまく和めなかった。
花京院の終電の時間が近づいてきたので去ることにした。
花京院には「なんかすみません」と謝罪されたが、弱肉強食の世界のことなので、もちろん彼が謝る必要はない。
後日、花京院はカズエとアポり、無事ベッドインに成功した。
俺は花京院の前では余裕ある態度で気にしない素振りをしていたが、内心では悔しさでいっぱいだった。
全力を尽くしたのならともかく、クラブ形式の店で力を発揮することができなかったからだ。
そんなとき、Jくんから連絡が入った。
それはクラブへの誘いだった。
俺は基本オールはしない。
クラブにも行ったことがない。
だが、クラブ形式の店で負けた悔しさから、この日は二つ返事でOKを出し、クラブへ行くことにした。
初のクラブ。
それは俺の想像を絶する世界であった。
(次回へ続く)