№0104 和みの先に
前回の続き。
№0103 奥義「無刀陣」誕生の瞬間 - 軟派黙示録ムササビ
風の民子とのアポで、俺は“性的アプローチ”を捨てて、“和み”に専念することを決意した。
ここで言う“性的アプローチ”は過剰なボディタッチやキス等の身体的な接触だけでなく、相手の性的情動を高めるような下ネタなども含めることとし、“和み”は相手との共感に重きを置いたコミュニケーションとする。ボディタッチの中でも、ツッコミや相手を励ますときに背中に手を置くなどの類は“和み”の扱いとする。
“和み”によって“ラポール”を深いレベルで築くことができれば、“性的アプローチ”なしでもセクに至るんではなかろうかという根拠のない閃きにもとづいてのことだ。
話は飛ぶが、このアポから数日後のナンパ師飲み会にて、先輩スト師Rさんから話を聞いたところ、Rさんは全く“性的アプローチ”を行わずにホテルへ誘導するらしい。
そういえば、以前講習を受けたガーデンさんも、カフェで連れ出した後に自宅へ誘導する間、“性的アプローチ”は全くしないという話をしていた。
両者の例は、“和み”の時間が極端に短いので、“ラポール”とは関係なく、Aフェーズでの高揚感や勢いを利用しているようにも考えられる。
ともあれ、“性的アプローチ”を全く行わなずにセクに至る道は存在しているというわけだ。
話を戻そう。
安居酒屋に入った俺と風の民子は対面で座った。
まずは風の民子から話を聞き出すために、呼び水として俺のくだらない話をした後に、風の民子に話を振る。
彼女が話し始めると、相槌をしっかりとして、時に大袈裟に笑ったり、時に突っ込んだりした。
ところどころ、嫌らしさがないようなかんじでソフトなボディタッチは織り交ぜた。
そんなやり取りをしばらく続けていると、徐々に彼女がヒートアップしてきて、かなりエグいかんじの暴露話を打ち明けてきた。
金に汚ない元カレやDV気味の元カレの話とか、彼らに対する彼女の復讐の話とか。
いつもならそんな話にドン引きする俺だったが、何故かこのときは彼女の話が興味深かった。
初めは彼女の話を熱心に聞いているフリをしていただけだったのに、気付かぬうちに本当に話に集中していたのだ。
彼女も同じようで、気付けば身を乗り出すように話していた。
気付けばあっという間に時間が過ぎて、彼女の予定の時間が来てしまい、解散することになった。
結局この日はセクトラできなかったが、良質なコミュニケーションができたため、何だかとても心が満たされた気分だった。
俺は彼女の全てを受け止め、彼女は俺に全てを投げ出していた。
このお互いの状態こそが、ラポールが築かれているということなのだろうか?
あの時間、俺と彼女は確かに心と心がつながっていた。
後日、普段短文しか来たことがない彼女からかなりの長文LINEが届いた。
その文章の内容からは俺に食い付いているのかどうかは不明だ。
友達フォルダ入りした可能性もあるが、何となくだが、次アポれたら彼女とはセクに至りそうな気がしている。
さて、この次の日、俺はいよいよ待ち望んでいたJDとのアポを迎えることとなった。