№0116 ムササビのクラブ活動
※前回の続き※
店内に入るともうすでに人はいっぱいだった
激しい音圧が耳をつんざくように襲う。
女子はハロウィンということでほとんどコスプレしている。
最初はみんな可愛いと興奮したが、冷静に考えてみると、この暗がりの証明とコスプレで3割増しくらいでみといた方がいいのかもしれない。
競合相手となる男は洗練されているヤツが多いように見受けられた。
中にはビックリするくらいのイケメンがいる。
はっきりいってストリートよりレベルが高い。
(俺の感覚だが、実はスト師にそんなイケメンはいない。)
みな若く勢いがありそうだ。
30代半ばのスト低の俺がこの中に割って入れるのか・・・?
俺はしばらく呆然と佇んでいた。
Jくんならば戦える戦闘力はあるだろうが、クラブでは音楽を楽しむ派というJくんは、女子達に興味なさげに心地よさそうにリズムに乗って体を揺らしていた。
遅れてプロフェッサーさんが到着してきた。
プロフェッサーさんはなんと50代半ば。
ストをはじめて数ヶ月で1000人声かけを達成し、若い女子を何人かゲットしている。
我々のコミュニティ以外にも、某R道場にも顔を出し、ストにおいては若さ(≒若作り)が重要であると考えている道場主のR氏がその考えをあらためるくらいの衝撃を受けたという逸話がある。
プロフェッサーさんは挨拶もそこそこに、いきなり人波につっこんでいった。
女子たちにベタベタと文字通りのスキンシップをしはじめた。
そして、Jくんも動きだす。
プロフェッサーさんの勢いにのって、うまくプロフェッサーさんの存在をいじって女子と和みはじめた。
年齢を言い訳にしようとしていた自分を恥じた。
俺も輪に入っていった。
俺も彼らがつくった空気感に便乗させてもらい、ようやく1番ゲした・・・!!
プロフェッサーさんに頼ってばかりはいられない。
ソロでサーチングを開始した。
しかし、なかなか声をかけるタイミングが分からない。
競合の男たちはどうしてるのかと見てみると・・・、
女子の腕を急に引っ張ってみたりとか、いきなり抱きついたりとか、
ストではあり得ないような強引な声かけをしている奴らがいた。
なるほど・・・、クラブという空間ではこういう手法がまかり通るのか・・・。
俺も勇気を出して真似してみた。
肩をたたいたり、腕を軽く引っ張った上でジェスチャーで挨拶してみる・・・すると多くの女子が愛想よく挨拶を返してくれた。
挨拶でオープンさせることはできるようになったが、その後の会話が続かない。
大音量のBGMのため、会話するには相手の耳もとにささやくような形で手をあてて話しかけなければいけないが、話すネタが思いつかなかった。
その後、どうにかもう1番ゲすることはできたが、この日はそれで終了した。
プロフェッサーさんはというと、お持ち帰りはできなかったようだが、大量の番ゲに成功したようだ。
これが実力の差か・・・。
さて、この約2週間後。
同じメンバー+αで別の箱に挑戦することになった。
前回の反省を踏まえて、今回は和み用のネタをいくつか用意して臨んだ。
その中の一つのネタは、「久しぶり」と声をかけて、中学時代の同級生という設定で話すというものだ。
3人に試してみた。
1人にはまあま受けてくれて話は続いたが、他の2人に対しては壮絶に滑り倒してしまった。
他のネタも試してみたが、やはり会話が続かない。
そもそも、前回と違い、今回はガンシカが多かった。
ハロゥインナイトは、やはり特別な状況だということだろう・・・。
徒労感に襲われて少し休んでいた時に、入店当初からいた2人組の女子が目に入った。
彼女たちは、早々に男たちに囲われていたはずだったが、ようやく開放されたようだった。
その片割れが相方と喋りながら、チラチラと俺を見てきた。
実は入店当初のときも俺を見ているような気がしていたのだが、気のせいだろうと放置してきた。あまり可愛くなかったこともあって・・・。
しかし、もはや気のせいとはいえないほどの視線だった。
間違いない。
これが噂で聞いていた、女子が気に入った男子にアピールするための目光線というやつだろう。
ムササビはご存知のとおりブサメンだが、どんなものにも需要があるようで、ごく稀にムササビの見た目がツボに入る女子がいる。
クラブの異様な雰囲気に酔いもあって性的に高ぶっていた俺は誰でもいい気分となっていた。
正直ストであれば決していかないレベルだったが、この子にいくことにした。
手を引っ張り、体を引き寄せた。
ムササビ「おっ、なんかご機嫌じゃね?」
タイプ落ちが期待できる相手には、イケメン的な語り口で攻めるのがいいだろう。
やはり、かなり好感触だった。
向こうから体を近づけてくる様子があった。
少し目がトロンとしてるし、キスはすでにいける状態にあった。
これがクラブマジックか。
普通にアポった場合、この状態に持っていくにはいくつもステップを踏まねばならないというのに。
正直、この状況にめちゃくちゃ興奮して、収縮状態だというのにリトルムササビに血流が一気に集中するかんじがあった。
だが、どこかビビっていた俺は、一呼吸置いて適当に和むことにした。
その判断が勝負の分かれ目となった。
元々彼女たちを囲っていた男たちが戻ってきて、強引に彼女たちを拉致っていた。
俺と彼女は手を握っていたが、その手は引き離されてしまった。
このとき、俺は不思議とその男たちに腹は立たなかった(まあ、もともと最初に手を出していたのは彼らというのもあるが)。
原始時代さながらのオスの本能むき出しにしたバトルが、なんだか純粋に楽しかったのだ。
その後は、プロフェッサーさんに便乗して30代半ばのクラバーと仲良くなれたことが唯一の成果であった。
この子はなかなかいいやつで顔も広そうなので、友人枠としてつながっておきたい。
こうして俺の2回に渡るクラブ体験は終了した。
これまでクラブというと、ヤクザがバックにいたり、半グレがいたり、ドラッグの売買など犯罪の温床になっているというイメージでいた。
もちろん、そういう一面もあるのだろうが、大半の男女は一般ピーポーだった。
クラブの醍醐味は、面倒なプロセスを全てふっ飛ばして、いきなりゴールまで持ち込めるということだろう。
俺は上述のキス寸前までいけた子のときはめちゃくちゃ興奮した。
何度もお持ち帰りしている連中はこの感覚が病みつきになっているに違いない。
一方、デメリットとしては、競合が多く女子の価値が高騰化してしまうところだ。
大半のスト師が声かけないであろうレベルの子ですら男が群がる。
きっと、女の子としてはきっとそれが嬉しいから、クラブに来るんだと思われる。
その中で勝たなければいけないのはキツい。
だが、そのことも含めて、1つのゲームとして捉えると面白いのかもしれない。
また、是非ともクラブに行ってみたい。
【次回予告】
新たなるストの手法を求めて迷走するムササビの前に現れたのは、出張から戻ってきたYであった。
Yがの一言が、まやもやムササビに変化を与える・・・